試合前に必ず同じ靴下を履いていた中学時代
部活の大会前、必ず決まった靴下を履いていた。理由は単純で、その靴下を履いた日に勝ったから。それだけ。洗濯が間に合わなかった日は、本気で不安になった。今考えると、靴下と勝敗に何の関係もない。でも、あの頃は本気で信じていた。
おまじないなんて意味がない、と大人になってから思っていた。でも調べていくと、意味がないとは言い切れない話が出てきた。トップアスリートほど、こういうことをやっている。しかも、心理学的に説明がつく部分がある。
イチローは毎朝カレーを食べていた
イチローが朝は必ずカレーを食べていることや浅田真央が必ず左足からリンクに入ることはスポーツ選手が行うゲン担ぎとして広く知られている。イチローといえばバッターボックスに入ったときに必ず同じ動きをすることも有名。ああいったルーティーンは体操の内村航平、ラグビーの五郎丸歩なども取り入れているもの。
イチローのカレー、浅田真央の左足、五郎丸のポーズ。世界のトップにいる選手たちが、こういう習慣を持っている。単なる迷信で片付けられない何かがある。
食事もカレーなど年単位で同じものを食べ続けていた。違うものを食べたことによりおいしくない、体調をくずしたなど野球に悪影響を及ぼすかもしれない要素を排除していたと考えられる。
イチローの場合、迷信というより合理性がある。毎日同じものを食べていれば、体調を崩すリスクが減る。変数を減らして、条件を一定にする。おまじないというより、実験の管理に近い発想。
強い人ほど、自分の弱さを知っている
スポーツ選手のジンクスやルーティーンは他にも勝ったときにしていたものと同じネックレスをする、アンダーシャツは必ず同じ銘柄にするなど枚挙にいとまがない。スポーツ選手は強靭な肉体にたくましい精神を宿した人と思われがちだが強い人ほど自分の弱さやもろさに気づき打ち勝つために何かの力を借りている。
ここが刺さる。強い人ほど、自分がもろいことを知っている。だから何かにすがる。おまじないを信じるのは弱さじゃなくて、自分の弱さを認めている証拠。
迷いは雪だるまのように自然に膨らむ性質を持っていて、これが厄介。イチローほどの天才でも結果が出ない時期が続けば迷いが生じる。迷いは心の隙間に入ってくるもので、この隙間を埋めるものがルーティン。
おまじないの正体は、迷いを埋めるための道具。何をすればいいかわからない不安な時間に、決まった行動を入れる。それだけで心が落ち着く。
おまじないとルーティンは実は別物
ごっちゃにされやすいけど、この2つは違う。
ルーティンは集中を作る技術
ルーティンは決まった手順、必ず行う動作などのこと。試合が始まる前に必ず同じ動作をすることで集中力を高められるなどの効果が見込める。脳はナマケモノで疲れる事が大嫌い。ただルーティンを活用すると無意識レベルで行えるようになりストレスを軽減する事が出来る。何故ならやる事や手順が決まっている事で脳の負担を軽減出来るから。
決まった手順を踏むと、脳が余計なことを考えなくて済む。判断のコストが減る。その分のエネルギーを、プレーに回せる。五郎丸ポーズは呪文じゃなくて、集中を作るスイッチ。
脳に状態の変化をインプットすることがルーティンの本質。
今から試合モードに入る、という信号を脳に送る。その信号がルーティン。同じ動作を繰り返すことで、その動作イコール集中、という回路ができる。訓練の一種。
迷信行動はプラセボ効果
迷信行動とは大事な試合では赤いウェアを着る、試合会場に入るときには右足から入る、ゲルマニウムブレスレットをはめるなど。これらの迷信行動もそれなりの暗示効果はあり迷いが生じるのを防ぐことに多少はつながる。しかしそれほど多くの効果を期待することはできない。赤いウェアを着ることで勝ったとしてもそれは暗示効果か偶然に過ぎない。医学・心理学用語でいえばプラセボ効果。
赤い服を着たから勝ったわけじゃない。でも、赤い服を着たことで安心して、いつも通りの力が出せた、ということはありうる。プラセボ効果。偽薬でも症状が改善するのと同じ。
つまり、おまじない自体に力はない。でも、おまじないを信じることには効果がある。この区別が面白い。信じることが効くのであって、対象が何かは関係ない。靴下でもネックレスでもカレーでもいい。
自分だけのおまじないの作り方
ジンクスやお守りは自分にとって信じられるものであれば何でもよい。これから何かラッキーなことがあったときに偶然身につけていたものややっていた動作を覚えておいてほしい。勝負が近づいたとき、不安になった朝などに同じものごとを活用すれば驚くほど気持ちが休まっていくのを実感するはず。
うまくいった日に何をしていたか。何を着ていたか。何を食べたか。それを覚えておいて、次の勝負のときに再現する。それだけでおまじないになる。他人のおまじないを真似しても効かない。自分の成功体験と結びついていないから。
みんなも今日は良いプレーができたというときがあると思う。そういう試合でやったことを習慣にするとポジティブな気持ちで試合に入ることができる。
成功したときの行動をコピーする。これがおまじないの正しい作り方。過去の自分がうまくいった状態を、体で再現する。
この話が会話のタネになる理由
部活、受験、プレゼン、面接。勝負の場面は誰にでもある。ゲン担ぎをしたことがない人はほぼいない。
あなたのおまじないは何?で盛り上がる
試合前とか大事な日に何かやってる?と聞くと、けっこう出てくる。決まった靴下、決まった朝ごはん、決まった音楽。人によって全然違う。しかも、他人から見ると意味不明。でも本人には切実。この温度差が面白い。
強い人ほど何かにすがっているという逆転
おまじないなんて弱い人がやること、と思っていた人に、イチローが毎朝カレーを食べていた話をすると、見方が変わる。強い人ほど自分のもろさを知っていて、だから何かの力を借りる。この構造は、貧乏ゆすりや声が大きい人の記事と同じで、外から見た印象と内側の実態が違う。
おまじない自体に力はないけど、信じることには効果がある。この話は、スポーツの話から人の心の仕組みの話に自然と深まっていく。雑談が哲学っぽくなる瞬間、けっこう気持ちがいい。

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