塩焼きの内臓に赤い糸みたいなやつがいた瞬間の話
秋になると食べたくなるサンマの塩焼き。七輪で焼いてもいいし、魚焼きグリルでもいい。あの香ばしい匂い、皮がパリッとなる感じ、内臓の苦みが好きな人も多い。でも内臓をほじっていたら、赤いにょろっとした糸みたいなものが出てきた、という経験をしたことがある人はけっこういると思う。
うわっ…と思って箸を止めた。虫?食べて大丈夫?それとも捨てた方がいい?という頭の中の問答、数秒で終わった人も、しばらく悩んだ人もいるはず(笑)。
正体はラジノリンクスという寄生虫、でも人体に害はない
あの赤いオレンジ色の虫はラジノリンクスという寄生虫で、内臓に寄生し、サンマ以外にもサバ、カツオなどの青魚にいる。ほとんどのサンマのお腹にいるそうで、いないサンマの方が珍しいという話もある。
ほとんど全部のサンマにいる、というのがポイント。レアな話じゃなくて、むしろ当たり前の話。知らなかっただけで、ずっと一緒に食べていた可能性が高い。
ラジノリンクスはサンマ・カツオ・サバなどの腸管内に寄生し、肛門から出ていたり内臓内に見られる。生でも加熱後でも赤橙色をしている。人体には無害だが消費者に不快感を与えるため相談が多く寄せられる。内臓に寄生していた場合、加工時に完全に取り除くのは困難。
加熱しても赤いまま、というのも地味に驚く。色が変わらないから余計に目立つ。でも体に害はない。知識として持っておくと、あの瞬間に慌てずに済む。
もう一種類、赤い虫のように見えて虫じゃないものがある
秋刀魚の内臓についている赤い物体のもうひとつの正体は、秋刀魚が食べた未消化のオキアミの色素。オキアミとは魚釣りの餌として使われるエビのような容姿をしたプランクトンで、秋刀魚にとってのご飯。口にしても問題はない。
虫に見えてただの食べかけのエビ、という状況。サンマは消化が早くて30分ほどで食べたものを出してしまうらしいから、未消化のまま残ることはあまりないが、タイミング次第で残る。食べた直後に漁で獲られたら残る。そういうこと。
サンマに潜む寄生虫、赤い虫以外にも種類がある
ラジノリンクスは無害だけど、サンマの寄生虫はそれだけじゃない。知っておいたほうがいいものが別にいる。
黒い紐みたいなやつ、サンマヒジキムシの話
秋刀魚の赤い虫以外でよく見られるのが、黒い紐のような形をしたサンマヒジキムシという寄生虫で、別名ペンネラとも呼ばれる。頭部をサンマの身体に突っ込んで寄生し、体のほとんどがサンマの身体の外に飛び出している。体長は7cmから10cmあり大きいので目につきやすい。店頭に並べる前にチェックしているが見逃されて残っている場合もある。
これは見たら一発でわかるやつ。黒くて長くて、ひじきみたいに見える。お店でチェックされているとはいえ、たまに残ったまま売られていることがある。こっちも人体には無害だけど、ビジュアルのインパクトが強い。
本当に注意が必要なのはアニサキス、赤い虫より断然怖い
サンマには寄生虫が付き物と考えたほうがよく、体内に寄生する赤い糸状の寄生虫ラジノリンクスは人体に害はない。さらに注意が必要なのはサバなどでおなじみのアニサキスで、これは生食時には要注意。沢山付いているもの、ついていた痕跡がある物は体液を寄生虫に吸われ、味が落ちていると考えたほうがよい。
アニサキスは白くて半透明、2センチ前後の小さな虫で、生きた状態で食べると胃の壁に食い込んで激しい腹痛を引き起こす。ラジノリンクスの赤い派手な見た目に驚きながら実は無害、一方で目立ちにくいアニサキスが本命の危険物という逆転が面白い。
アニサキスは魚が死んでから時間が経つにつれ内臓から筋肉に移動するので、鮮度のよいサンマを買って早めに内臓を処理することで身に移動する可能性が減る。加熱か冷凍で死滅するが、冷凍の場合はマイナス20度で24時間以上が必要で、家庭の冷凍庫では温度が足りないことがある。
サンマの寄生虫話が食卓で最高の会話になる理由
秋になればサンマを食べる機会がある。その食卓で、塩焼きを食べながらこの話をすると、かなりの確率で盛り上がる。
知ってた?と聞いたとき、ほぼ全員が知らない
ラジノリンクスという名前を知っている人は少ない。あの赤い虫の正体を正確に説明できる人はもっと少ない。でも見たことがある人は多い。経験はあるけど、名前も正体も知らない状態の人に情報を渡すと、あの食卓での記憶が一気に蘇る。
あの赤いやつ、実はほぼ全部のサンマにいるらしいよ、という一言で、え…ということはずっと食べてたってこと?という反応になる。無害だと知ったときのほっとした感じ、それも込みで会話が動く。
怖い話と安心話をセットにすると話が長くなる
ラジノリンクスは無害、でもアニサキスは本当に怖い、という構造を話すと、聞いている側が自分のこととして受け取りやすくなる。サンマの刺身を食べたことがある人は、そのとき大丈夫だったか確認したくなる。アニサキスで病院に行った経験がある人がいると、その体験談が出てくる。胃カメラで取ってもらった話、激痛で夜中に救急に行った話。食卓でする話としては少しダークだけど、だからこそ記憶に残る。
見た目の怖さと無害さのギャップが雑学として強い
鮮やかな赤い虫が出てきてギョッとする。でも実は無害で、ほとんどのサンマに入っている。一方で地味な白い糸みたいなやつが本当の危険物。このギャップが話題として強い。見た目で判断できないという事実が、聞いた人の中に残る。
加熱しても色は赤いまま変わらないから、焼いたあとで出てきたときに驚く人もいる。ちゃんと火を通したのに赤いまま残っている、という状況、知識がなければ火が通っていないと思う人もいる。その誤解を解く情報として渡せる。
食べ物の話は感情を包む器になる。秋のサンマを美味しく食べた記憶、内臓から赤いものが出てきてぎょっとした記憶、それを誰かと共有するときに自然と感情が一緒に出てくる。情報を渡しているつもりで、そのとき感じた驚きや安堵を一緒に渡している。雑談ってそういうことだと思う。

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