宅配の受け取りでいつも使っているハンコ、実は認印じゃなかった
書類にハンコを押す場面で、シャチハタ不可、と書いてあった。手元にあったのはいつも宅配便の受け取りに使っているハンコ。これでいいや、と押そうとしたら、隣にいた人にそれシャチハタだよ、と止められた。
え、これシャチハタなの?普通のハンコじゃないの?という混乱があった。見た目は普通のハンコと変わらないのに、何が違うのか。なんでシャチハタだとダメなのか。調べると、見た目では分かりにくいけど、押せばすぐにバレる明確な違いがあった。
朱肉がいらないのがシャチハタ、いるのが認印
シヤチハタ(浸透印)は印面だけ見るとほかの印鑑と見分けがつかないことがある。印鑑はインクが内蔵されていないため朱肉を使わなければ押せない。一方で浸透印はインクが内蔵されているスタンプのようなものであるため朱肉を使わなくても押印することができる。
一番わかりやすい見分け方がこれ。朱肉なしで押せたらシャチハタ。朱肉がないと押せなかったら認印。シャチハタはインクが内蔵されているから、そのまま押せる。あの手軽さがシャチハタの便利なところで、同時にバレる理由でもある。
押した跡が微妙に違う、ゴム印だから
一般的な印鑑は木や動物の角、金属などの材質で作られておりゴムとは違い強く押しても印影が変わることはない。そのためシャチハタと違い法的拘束力のある契約に向いている。
シャチハタの印面はゴム。だから押す力の強さで印影が微妙に変わる。強く押すとにじんで太くなり、軽く押すと細くなる。一方、木や金属の認印は何度押しても同じ形になる。受け取った側が見ると、ゴム印特有のにじみや形の不安定さでシャチハタだとバレる。提出された書類を見慣れている人なら一目でわかる。
インクの色味も違う。シャチハタのインクは染料系で、時間が経つと色褪せやにじみが出ることがある。朱肉は顔料系で、長期間鮮やかに残る。
印影もインクではなく朱肉を使っているため長持ちする。1,000年前の古文書や水墨画に押されたはんこは今でも鮮やかに赤く残っている。
1000年残る朱肉と、数年で褪せる可能性のあるシャチハタのインク。重要書類に求められるのは長期保存できる朱肉のほう。この耐久性の差も、シャチハタが正式な書類で嫌われる理由になっている。
なぜシャチハタは公的書類でダメなのか
そもそもなぜシャチハタが認められないのか。理由が3つある。
同じ印影が大量に存在するから本人証明にならない
シャチハタを使用できない理由として、本人が押したと証明できないため、印影の形が一定ではないため、インクを使用しているため、の3つが挙げられる。書類に押印が求められる理由は本人が書類の記載内容を確認・承認したことを証明するため。印鑑は同一の印影がふたつとして存在しないため押印が本人の意思表示になる。一方シャチハタは大量生産品で同一の印影が複数存在することから本人が押したという証明性に欠けるため不可とされている。
ここが核心。シャチハタは工場で大量生産されている。山田という名前のシャチハタは、全国に同じものが何千個も存在している。だから、その印影が本人のものだと証明できない。誰でも同じ山田のシャチハタを買って押せてしまう。本人確認の役割を果たせない。
対して、認印や実印は基本的に一点ものに近い。手彫りや機械彫りでも微妙な個体差があって、同じ印影が二つとない。だから本人が押した証拠になる。ハンコ文化の根幹にある、印影は唯一無二という前提が、シャチハタには当てはまらない。
シャチハタという名前自体が実は商品名じゃない話
ここも面白い。シャチハタという呼び名の正体。
普段私たちがシャチハタと呼んでいるハンコには正式名称がある。本来の名前はXスタンパーといいシャチハタというのは商品を製造・販売しているシヤチハタ株式会社から来ている。なぜXスタンパーではなくシャチハタと呼ばれるようになったのか。理由としては発売当時に社名のシヤチハタを大きく宣伝したことにより商品名よりもシャチハタの方が人々の印象に残ったから。
シャチハタは会社の名前で、商品名はXスタンパー。会社名のほうが商品名より有名になって、定着した。ホッチキスやセロテープと同じパターン。会社名が商品の一般名詞になってしまった。
シャチハタと読むが正式名称はシヤチハタと、ヤは大きなヤで表記するのが正しい。
しかもシヤチハタは、ヤが大きい。シャチハタではなくシヤチハタが正式表記。これを知っている人はほとんどいない。ロゴをよく見ると確かにヤが大きく書かれている。富士フイルムのフイルムが大きいのと同じで、日本企業の社名には小さい文字を大きく表記するものがいくつかある。
シャチハタは実はシヤチハタ株式会社の社名からきている。シヤチハタ製のネーム印、主にネーム9が社会にひろがったことで浸透印やネーム印がシャチハタと呼ばれるようになった。浸透印やネーム印はシヤチハタ以外にもサンビー製やブラザー製のものがある。
つまり、他社製の浸透印もまとめてシャチハタと呼ばれている。本当はシヤチハタ社の製品じゃなくても、浸透印は全部シャチハタ。商品名が一般名詞化した典型例。
この話が会話のタネになる理由
ハンコを使ったことがない社会人はほぼいない。シャチハタ不可と言われて困った経験がある人も多い。
朱肉がいるかいらないかでわかるという実用知識
シャチハタと認印の見分け方、知ってる?という問いを投げると、なんとなくしかわからない人が多い。朱肉なしで押せたらシャチハタ、という簡単な見分け方を伝えると、そんな簡単なことだったのか、という反応になる。なぜ大量生産だから本人証明にならないのか、という理由まで話すと、シャチハタ不可の意味が腑に落ちる。
シャチハタが会社名で、ヤが大きいという雑学
シャチハタって会社の名前で、商品名はXスタンパーなんだよ、という話をすると、え、そうなの、という反応が来る。しかも正式にはシヤチハタでヤが大きい、という話を続けると、ロゴ確認したくなる人が出てくる。ホッチキスやセロテープ、ジーパンの話と同じで、商品名や呼び名が一般化した現象は、身近なものほど面白い。普段当たり前に使っている言葉の正体を知る、という雑学の王道パターンで、会話が広がる。

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