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二枚目がかっこいい男の意味になった理由は歌舞伎の看板にあった話

目次

一枚目でも三枚目でもなく、なぜ二番目なのか

二枚目俳優、という言葉を何十年も使ってきた。かっこいい男の代名詞として定着していて、疑問を持ったことがなかった。でもある日ふと気になった。なぜ一枚目じゃないのか。なぜ二番目がかっこいい人を意味するのか。一番がかっこいい、という感覚が自然なのに。

調べると、江戸時代の歌舞伎小屋の外に吊るされた木の板の話が出てきた。

芝居小屋の外に出演者の名前を書いた看板が並んでいた

歌舞伎の看板は通常8枚から成っていた。一枚目の看板は書き出しと言われ主役の名が書かれ、二枚目の看板には若い色男の役者の名が書かれることになっていた。また三枚目の看板には道化役の名が書かれることになっていた。

8枚の木の板が芝居小屋の正面に並んでいた。それぞれの板に役柄ごとの役者の名前が書かれていた。一枚目は主役、二枚目は色男、三枚目は道化役。この並び順がそのまま言葉として定着した。一枚目が主役なのに、二枚目のほうがかっこいいの代名詞になったのは、主役が必ずしも美男子ではなかったから。主役は貫録や強さで選ばれる。二枚目は顔と色気で選ばれる。

歌舞伎の二枚目は白塗り顔を白く塗る化粧で鼻筋が通ったいい男の役。白粉で白く塗った顔、すっと通った鼻筋。今のイケメンの条件と大して変わらないのが面白い。江戸時代の美の基準が、令和の言葉に残っている。

一枚目と二枚目の役割の違いが面白い

二枚目俳優なんて言葉をテレビなどでよく耳にする。二枚目とは歌舞伎に登場する色男役のことをいう。男女の恋愛を演じるいわば色恋沙汰を担当する役者。二枚目を担当する役者は当時から容姿端麗で若く美しい男性ばかりだった。

色恋を担当する役。今で言えばラブストーリーのメインキャスト。主役は戦ったり権力を持ったりする役で、二枚目は恋愛シーンをこなす役。その役を任されるのが花形の美男子俳優だったから、二枚目イコール美男子、という等式ができた。

三枚目が道化役になった理由

二枚目の話をすると必ず三枚目の話が出てくる。三枚目は面白い人、という意味でまだ現役の言葉。

八枚目まで役柄が分かれていた

二枚目は顔立ちがカッコいい男性を指す。三枚目以降の言葉は今はほとんど使われなくなった。四枚目以降は少し地味でネガティブな役回りでもあるのであまり注目されなかったのかもしれない。

一枚目から八枚目まで役柄が決まっていたけど、今でも使われているのは二枚目と三枚目だけ。四枚目以降は地味だったり悪役だったり、日常語として生き残れなかった。かっこいいと面白いだけが現代まで届いた。

江戸と上方で二枚目のタイプが全然違った話

かっこいい男性の理想像、江戸時代から地域によって違っていた。

江戸はシャープで粋、上方はちょっと頼りない色男

江戸の歌舞伎ではすっきりとして粋でシャープな二枚目が人気。その中でも特に二代目市川團十郎が初演した助六は江戸っ子の美学が凝縮されたものであり当時の理想的な色男を体現したものであったと言われている。江戸の若者たちが助六のスタイルを真似しただけでなく鉢巻の色江戸紫が大流行するなど助六はファッションにも大きな影響を与えた。

江戸の二枚目は今で言えばクールでシャープな男。鉢巻一本が流行になるほど影響力を持っていた。芸能人のファッションが街に広まる現象、江戸時代からあった。

上方歌舞伎の二枚目の代表が廓文章の主人公藤屋伊左衛門。大坂の豪商の若旦那が恋人である遊女のもとへ通いつめていたが多額の借金を背負い親に勘当されてしまう。金も力もなくて頼りないけれども愛嬌のある伊左衛門はつっころばしと呼ばれ突っつけば転んでしまうようなキャラ。

上方のかっこいい男は、ちょっと頼りなくて借金持ちで親に勘当されている。でも愛嬌がある。突っつくと転ぶ、という表現がかわいい。江戸の粋なかっこよさと、上方のだらしないかわいさ。関東と関西の気質の違いが、かっこいい男の理想像にまで出ていた。

二枚目半という言葉が面白い

二枚目半とは美男子でありながらこっけいな役を演じることの多い役者を指す言葉。美男子なのに嫌味なところがなく気さくで愉快な人物。

二枚目と三枚目の間。かっこいいけど笑いも取れる。これ、現代でモテる男の条件にかなり近い気がする。完全な二枚目は近寄りにくい。完全な三枚目は恋愛対象になりにくい。その中間が一番人気になる。江戸時代の歌舞伎ファンが気づいていた真実が、令和のモテ論と一致している。

この話が会話で止まらなくなる使い方

二枚目という言葉を知らない人はほぼいない。でも語源を知っている人は少ない。

なぜ一枚目でなく二枚目なのかという問いのインパクト

二枚目って一番じゃないのに、なぜかっこいい意味なんだろうという問いを誰かに投げると、え、言われてみれば確かに、という反応になる。歌舞伎の看板の並び順で一枚目が主役、二枚目が色男という話を出すと、なるほど、という顔になる。

江戸と上方で二枚目のタイプが違う話、頼りない借金男が上方のかっこいい男だったという話を続けると、関東と関西の気質の違いの話になる。出身地が違う人が混在するほど盛り上がる展開になりやすい。

二枚目半という言葉でかっこよさと面白さの中間が最強という話にも転がる。その場にいる人でかっこいい人は誰か、面白い人は誰か、という話になるとさらに盛り上がる。語源から始まって、その場の人間評価の話まで広がる。そういう展開が、雑談として一番楽しい形。

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この記事を書いた人

会話のタネ編集部
日常のちょっと話したい、でも何を話せばを解決するために生まれた編集チーム。
人間観察が好きで、感情をそのままぶつけるのではなく、エンタメとして包んで伝える時代のコミュニケーション雑談のコツや話題の見つけ方を研究しています。
読んだその日から使える軽やかな会話術をお届けします。

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