子どもの頃から当たり前にやってきたことが、実はグレーゾーンだった
海に行くたびに貝殻を拾っていた。きれいな模様のもの、螺旋がきれいなもの、薄くて光に透けるもの。ポケットがじゃらじゃらするくらい集めて、家に持って帰って、窓際に並べて満足していた。何十年も、誰にも咎められたことがない。
でも調べてみたら、グレーゾーンだった。むしろ厳密には法律に触れる可能性があって、海外では逮捕された人もいる。え…あの行為で逮捕?という話が、海に行く前に知っておく価値のある雑学になる。
日本の海岸は国有財産、そこにあるものも含めて
海岸は国有財産として管理されている。砂も貝殻もサンゴも、その国有財産の上に存在している。だから厳密には、そこにあるものを無断で持ち出す行為は、法的にはグレーになる。
海岸法という法律があって、海岸保全区域では土砂の採取に許可が必要で、違反すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になりえる。貝殻が土砂に含まれるかどうかは解釈の余地があるけど、含まれると判断されればアウト。
ただし、国土交通省に直接電話して聞いた人によれば、個人が趣味の範囲で少量拾う分には基本的に問題ない、という回答だったとの記録がある。大量採取や転売目的になると話が変わる。この曖昧さが、知れば知るほど面白い。
沖縄と小笠原は別格で厳しい
沖縄の海岸担当者に直接聞いた記録が残っていて、貝殻は砂浜の元になるものなので取らないでほしい、家族で遊びに来て少し拾うくらいはいいけれど、お土産屋で売っている貝殻の作り物はあれは本当はダメ、という話だったという。
サンゴは生きているものが海岸法で、死骸は砂利採取法で採取禁止になっている。小笠原はそもそも国立公園内で、ほとんどのものが持ち出し禁止。天然記念物に指定されたカサガイも当然持ち出し禁止。知らなかったじゃ済まされない話が沖縄・小笠原には多い。
海外だと逮捕・投獄になった実例がある
日本はまだ緩い方で、海外は本当に厳しいところがある。これが雑談の中で一番インパクトが出る話。
フロリダで40個の貝殻を持ち帰った女性が15日間投獄された話
2018年のアメリカの話。フロリダのビーチで貝殻を40個持ち帰った女性が、15日間投獄されて500ドルの罰金を命じられた。彼女が採取した中に絶滅危惧種に認定されている女王貝が含まれていたことが原因だった。
アメリカでは特定の種が保護されていて、生きた貝殻の採取は罰せられる可能性がある。空の貝殻は許可されているが、見た目だけでは空かどうかわからない貝もあって、それが問題になる。貝殻を拾って2週間以上刑務所に入る、という現実が起きている。
イギリスでは貝殻1個で20万円の罰金になりえる
英国北西部カンブリアの砂浜では、5月から9月末の期間、貝殻や砂、小石を持ち帰ることが禁止されている。地元の海岸保護法に基づいて、違反した人には最高で1000ポンド、日本円で約20万円の罰金が科せられる可能性がある。
地元の議員は、小石や貝殻は浸食から海岸を守り、生き物の生息地にもなっていて、それらを持ち帰ることは環境を破壊することにつながると語っている。観光客が記念に一個持って帰るだけで20万円。日本の感覚からすると信じがたいけど、これが現実にある。
なぜ貝殻がそれほど大事なのか、という本題
罰金や逮捕の話が先行するけど、なぜそこまで守られているのかの理由を知ると、話の奥行きが変わる。
砂浜は貝殻で作られている、という事実
貝殻は砂浜を安定させる役割を持っている。時間をかけて砕けた貝殻が砂になって、浜を形成していく。つまり、今日誰かが拾った貝殻は、100年後には砂浜の一部になるはずだったもの。
貝殻は炭酸カルシウムの供給源にもなっていて、海水に溶けて海洋に循環していく。ヤドカリの住処にもなるし、鳥の巣作りの材料にもなる。藻類や甲殻類の住処や付着面にもなる。一枚の貝殻が担っている役割が、想像以上に多い。
ヤドカリと貝殻の話が切実
ビーチから貝殻がなくなって一番困るのがヤドカリ。あの生き物は自分では殻を作れなくて、ちょうどいいサイズの貝殻を探して住み替えながら生きている。貝殻が減ると住処の争奪戦が激化する。
しかも沖縄にいるオカヤドカリは、すべて天然記念物に指定されている。見た目が貝殻に見えても中にオカヤドカリがいる場合がある。誤って持ち帰ったら、その時点で文化財保護法違反になる。貝殻を拾ったつもりが天然記念物を拾っていた、という事態が実際に起きうる。
知っている人と知らない人でここまで差がある話
海に行ったことがある人はほぼ全員、貝殻を拾ったことがある。その行為に法律が絡んでいることを知っている人は、圧倒的少数。この非対称が会話のタネとして効く。
海外旅行前に知っておくと本当に役立つ
ハワイやフロリダ、地中海のリゾートに行く前に、貝殻を持ち帰ることへの法的リスクを知っておくことは実際に有益な情報として渡せる。知らなかったでは済まないし、海外だと逮捕まである。記念に一個、という気持ちが現地では通用しない場合がある。
旅行の話をしている流れで、ハワイとか行ったら貝殻持ち帰ると逮捕されることあるって知ってた?と投げると、え!という反応になる。その後の話が旅行あるあるから環境問題まで広がっていく。
子どもに教えるときの話題としても使える
親子で海に行くシーンで、貝殻を拾いたがる子どもに対してダメと言うだけじゃなく、なんでかを伝えられる。あの貝殻はヤドカリの家になるんだよ、砂浜を作るためにあるんだよ、という説明は子どもに響く。禁止だから、ではなく理由を伝えると記憶に残る。
子どもに何かを伝えるとき、正しい情報を持っていることが前提になる。貝殻の話を知っているだけで、海という場所の説明が豊かになる。それが雑学を持つことの、地味で確かな使い道でもある。

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