MENU

ミンミンゼミが関西にいない理由とは?夏の鳴き声が東西で全然違う話

目次

大阪出身の友人が、ミンミンという鳴き声を聞いて固まった

東京の公園を一緒に歩いていたとき、友人がふと立ち止まった。あの声、なに?という顔をしている。ミンミンゼミだよ、と言ったら、初めて聞いた、という反応が返ってきた。

セミを初めて聞いたわけじゃない。大阪でもセミはうるさいくらい鳴いている。でも大阪のセミはワシャワシャ、シャーシャーという音で、ミンミンとは全然違う。同じ夏の日本なのに、セミの声が別物。これ、気づいていない人が相当多い話だと思う。

東日本はミンミンゼミ、西日本はクマゼミという大きな分断がある

元来ミンミンと鳴くミンミンゼミは比較的寒冷な東日本に多く、クマゼミは温暖な西日本に多い。

クマゼミはワシャワシャという濁った大音量の鳴き声で、関西の夏はあれが支配している。ミンミンゼミのあの独特のリズム、ミーンミンミンミン、は関西人にとって異国の音。ところが関東育ちにとっては夏の基本音で、クマゼミの声を初めて聞くと何この虫、という顔になる。

同じ日本の夏なのに、耳が覚えているセミの声が全然違う。このすれ違いが出身地を問わず面白い話になる。

なぜ分布が分かれているのか、セミが自力では動けない理由

今の東京と大阪の気候はそれほど変わらない。それでもなぜセミの分布が変わらないのか、という疑問が生まれる。

京都大学の沼田英治名誉教授はセミの飛行距離はそれほど長くないと指摘する。クマゼミに印をつけて飛距離を測る実験では、長く飛んだものでも1キロメートル強だった。さらにセミは生涯のほとんどを土の中で過ごす。木などに産み付けられた卵は翌夏にふ化し、幼虫は自力で土に潜る。土の中で過ごす期間は6年から8年とも言われていて、植木に紛れて運ばれることはありうるが長距離を移動することはまれで、地域差が出る理由のひとつとなっている。

1キロしか飛べないセミが、自力で東日本から西日本に移動することはほぼない。幼虫として6年以上土の中にいるから、その土ごと移動しない限り分布は変わらない。だから気候が似てきても、分布がなかなか変わらない。歴史的に決まった縄張りが、虫の移動能力の低さによって維持されている。

クマゼミが都市部で増えた意外な理由

近年、関西の都市部でクマゼミが圧倒的に増えた。もともと多かったのに、さらに増えた。

土が固いほどクマゼミに有利という話

都市部の公園で観測されるセミはクマゼミとアブラゼミがほとんどの割合を占めていて、森林ではヒグラシやニイニイゼミが多い割合を占めるものの一部ミンミンゼミも確認されている。都市の土が踏み固められるとセミの多様性が減少するという研究結果がある。

土が踏み固まるとクマゼミが有利になる。クマゼミの幼虫は固い土でも潜れる構造をしている。一方でミンミンゼミやアブラゼミは柔らかい土を好む。都市化が進んで土が固くなるほど、クマゼミが勝つ。都市と虫の関係がこんな方向で出るとは思わない。

関東でも今後クマゼミが増える可能性がある

1995年の環境省の調査では東京や千葉あたりがクマゼミ生息の北限だったが、現在では埼玉県や茨城県でもクマゼミが確認されており、クマゼミの分布は次第に北上している。関西地方でミンミンゼミの代わりにクマゼミが増えたように、関東でもいつかクマゼミが台頭しミンミンゼミが減少するかもしれない。

今の東京っ子が当たり前に聞いているミンミンゼミの声が、数十年後には関東でも聞けなくなる可能性がある。気候変動と都市化がセミの勢力図を書き換えている。夏の音が変わる、という話はなんか切なくなる。

東西でセミの声が違う、という事実が会話でなぜ強いのか

音の記憶は感情と直結している。夏の記憶の話をするとき、セミの声は必ずそこにある。

夏休みの記憶が東西で全然違うという話になる

子どもの頃の夏休み、どんな音で目が覚めてた?という問いを誰かに投げると、出身地によって全然違う答えが返ってくる。ミンミン派とワシャワシャ派に分かれる。ミンミンゼミを知らないという人に、東京の公園でその声を聞かせると、初めて聞いた、という反応になる。

その逆もある。クマゼミの声を知らない東京育ちが関西の夏に来て、うるさすぎる、あのセミ何?となる。ワシャワシャは音量がとにかく大きくて、クマゼミが近くで鳴くと会話が聞こえないくらいになる。あの音量差、ミンミンゼミとは種が違う。

セミの鳴き声と出身地がセットになる話題の強さ

出身地を聞くより、夏のセミの声はどっちだった?と聞くほうが自然に出身地の話になる。ミンミン派は関東以北、ワシャワシャ派は関西以西、という大まかな分類ができる。さらに詳しく言えば境界線の地域では両方聞こえるという話になって、その地域に縁がある人が出てくる。

ミンミンゼミとクマゼミは高知県の桂浜、愛知県の渥美半島、伊豆半島など各地で同時期に出現する地域がある。これらの地域では両種が同時に鳴いている時期がある。

境界線の地域にいた人は、両方の声を知っている。その人が会話に加わると、両方向から話せる。こういう地域の話題は、出身地が違う人が混在するほど面白くなる。

セミが6年以上土の中にいるという話のインパクト

セミの幼虫が土の中で6年から8年過ごす、という話は意外と知らない人が多い。あの短い鳴き声の期間のために、6年以上土の中で準備している。その話を聞いた後で夏のセミの声を聞くと、少し違って聞こえる。

関西ではクマゼミが土の中で6年以上待っている。関東ではミンミンゼミが待っている。その地域の土の下に眠っているセミが、毎年夏に声を出している。東西で鳴き声が違うのは、その土地の歴史でもある。ちょっと大げさだけど、そういう話をすると夏の記憶がちょっと深くなる気がする。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

会話のタネ編集部
日常のちょっと話したい、でも何を話せばを解決するために生まれた編集チーム。
人間観察が好きで、感情をそのままぶつけるのではなく、エンタメとして包んで伝える時代のコミュニケーション雑談のコツや話題の見つけ方を研究しています。
読んだその日から使える軽やかな会話術をお届けします。

コメント

コメントする

目次